見落としがちな転職のコツ

2020年3月12日

ハイクラスを目指す人には、なぜセルフマネジメントの習得が有効なのか

doda Xでは、転職サービスに続き、対話によりキャリアを整理できるサービス「doda X キャリアコーチング」を提供しています。今回は、本サービスの提携先である、業界大手で、これまで延べ5,000人の支援実績を持つエール株式会社 代表取締役 櫻井 将さんに、これからハイクラスを目指す方が、マネジメント能力を効果的にトレーニングできる方法について寄稿いただきました。

マネジメント能力はどうやってトレーニングする?

こんにちは。櫻井です。前回までは、部下を持つ方専門職の方の他者とのコミュニケーションに焦点を当てました。今回は、これからハイクラスを目指す次世代のリーダーにとって、自分の内面を見つめることが、将来のマネジメントに非常に役に立つという話をしたいと思います。

セルフマネジメントはチームマネジメントに通じる

セルフマネジメントとは、日本語に訳すなら「自己管理」。意味は、個人の夢や目標を叶えるために自分自身を律すること。自分の感情をコントロールしたり、モチベーションを維持したり、目標に向けてやるべきタスクの優先順位を決めたり…といったことだと一般的には言われています。

一人の人間の中には、いろいろな「自分」がいます。仕事に一所懸命に取り組みたい自分と、仕事以外の趣味にも打ち込みたい自分。都会でスマートに暮らしたい自分と、自然豊かな田舎でのんびり暮らしたい自分。ダイエットをしたい自分と甘い物を食べたい自分。世界平和を願っていた自分が、10分後に満員電車で横の人に苛ついていたりします。自分の中にはいつも複数の自分がいて、葛藤は絶えません。

例えば、ダイエット中、ケーキを食べたいと思う自分は悪者なのでしょうか?ケーキを食べたいと思う自分にも、その目的があります。これを心理学では「肯定的意図」と呼んだりします。ダイエットしたい目的と、甘いものを食べたい目的のどちらかを我慢するのではなく、両方を叶える方法を見つけることはできないものでしょうか?

実は、こうした自分の中の葛藤とその対処は、「VUCA(ブーカ)」と呼ばれる不確実で複雑な現代のビジネス上のマネジメント、特に人間関係の調整において非常に似ている部分があります。
VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)

チームにはそれぞれ異なる考えや価値観を持つ人が集まっています。同じ出来事に対しても、考え方や感じ方は人それぞれです。そして、それぞれの異なる意見や主張を全て「そのまま」叶えることは通常できません。例えば、お客さんが期待しているこの機能を開発すべきだ!と主張をする営業マン。一方で、プロダクト視点でこの機能はつけるべきではない!という意見のエンジニア。この場合、両者の主張をどちらも「そのまま」叶えることはできませんが、これはどちらかが悪者なのでしょうか?

自分の中の葛藤を扱うこと。表面的には相反する自分の主張を扱うこと。どちらかを悪者にして見て見ぬ振りをするのではなく、それぞれの主張の目的(肯定的意図)を理解した上で、両者ともに納得する選択肢を考えて実行する。このようなセルフマネジメントは、実は職場の人間関係を良くする力を養う上で、一番身近にあり一番良い練習台となります。

例えば、仕事に一所懸命に取り組みたい自分と、仕事以外の趣味にも打ち込みたい自分。どちらかに眼をつぶるのではなく、そこに向き合い「自分は人生で何を成し遂げたいのか」「自分はどうなれば幸せなのか」「あの時、自分はなぜああいう決断をしたのか」「どうすれば違う決断ができたのか」といったことを自覚し、概念化していくことは、将来マネジメントを目指す上でとても良いトレーニングになるのです。

実は、世の中のエグゼクティブの多くが、マネジメントとしてのパフォーマンスを上げるために、このように自分の内面を見つめ、掘り下げる作業を「コーチング」の力を借りて行っています。

「ビジネス上の問題なら社内の誰かに相談すればいいのでは?」と思われるでしょうか。でも、人の内面はそこまでビジネスとプライベートがはっきり分かれているわけではありません。プライベートの問題が仕事にも影響を及ぼしている、あるいはその逆のケースもあります。また内面を扱うことには、それなりの経験と知識が必要です。その意味で、直接的な利害関係のない第三者であり、経験を積んだ「コーチ」の力を借りることは理に適っているのです。

コーチングは、すでに部下を持つマネジャーにだけ有効というわけでなく、これからハイクラスを目指す方が仕事のパフォーマンスを上げる上でも役立ちます。セルフマネジメントを「経験」として成長の糧にしていくために、一度コーチングを受けてみてはいかがでしょうか。

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